続?秋の読書感想文 in フランス 。【読書って楽しい!おすすめのフランス語小説3つ】

昨年の読書レビューから、早一年。

夏の読書感想文 in フランス 。【読んで良かった!おすすめフランス語の本3つ】

教科書的なフランス語の勉強は、今年は ほぼしておりませんが(笑)、

頭の体操がてら、小説を毎日少しずつ読み続け(平日のルーティーンと化しています)、

何冊か読破することが出来ました☺

どれも 興味深く、得るものが多かったので、

今年も ぜひ紹介させていただきたいと思います♪

今回は 気分が乗って やや長文になっているレビューもありますが、どうか ご容赦を(笑)

日本に お住いの方向けに、今回も 日本で購入できる書籍にはリンクを貼らせていただいております。

それでは いってみよう(^^)

もくじ

  1. Aurélien 著者 Louis Aragon
  2. Une Sirène à Paris 著者 Mathias Malzieu
  3. Code 612 Qui a tué le Petit Prince ? 著者 Michel Bussi

Aurélien

著者 Louis Aragon

まずは ダダイスム、シュルレアリスムを代表する作家、ルイ・アラゴンの小説。

700ページ越えと外国語の本の中では自分史上初の長さでした!

第一次世界大戦から戻り、人生に意味を見出せなくなっていた30代の主人公 Aurélien と

長らく生きる意味を失っていた 20代の既婚女性 Bérénice が、共通の知人のパーティーで出会い、恋に落ちるという物語。

お互いに惹かれ合い、好意があると互いに認識しているのにも関わらず、

「付かず離れず」の関係を繰り返し…

そうこうしているうちに すれ違いが生まれ、お互いに別の人生を歩み、十数年後に再会を果たす。

しかしながら 再会して感じたことは やはり お互いの感覚のズレで。。

一言で 表すなら、「拗らせ男と女の恋愛 in パリ」ですかね。。

恋をした時のハッとするような純粋で臆病な気持ちや、ドロドロ、ジメジメしたネガティブな感情、

それぞれの登場人物が複雑な心情を持ち、それらが複雑に絡み合う様が 非常に微細に描かれています。

プラスの感情とは相反する負の感情を同時に併せ持つのが人間、矛盾があるのが人間。

人間の心って複雑で面倒くさくて、時に嫌になるけれど、だからこそ面白い。

だからこそ、「文学」のテーマとなる。

そんな ことをたっぷり味わえる作品です。

物語の流れは 主に、個人の出来事、世の中の出来事(主に戦中、戦後)、主人公の べレニスに対する 悶々とした気持ちを定期的に繰り返す流れで、700ページと長いので、

人によっては 途中読むのがしんどくなる方もいらっしゃるかもしれませんが、

純文学ならではの美しい風景描写や 当時の世の中の状況や それに翻弄される人々の心理描写も 読んでいて魅力的ですし、

パリの描写は、自分が知っている地域も頻繁に出てくるので、結構イメージがしやすくて より作品に入れる感じでした。

ベースは「恋愛物語」ですが、やはり文学作品、色々なことを考えさせる深い作品でした。

ラストの なんともあっけない、暗い、でも滑稽な幕引きは、

「う~ん、文学…!」って感じ。

あと、今のご時世 考え方が多様化しているので、人それぞれだと思いますが、

「男の恋愛はフォルダ別保存、女の恋愛は 上書き保存」というのを実感する場面・男性は過去の恋愛の思い出に捕らわれ、美化しがち(ラスト)もあったりして、他の場面にも言えることですが、人間の考え方って、時代が こんなに変わっても意外とあまり変化しない、普遍的な面があるんだなぁと つくづく思いました。

個人的には、私は主人公のことを好きになることは まずないなぁ。。

良い歳なのに いつまでも 高慢で、幼い感じが…「面倒くさいな」と(笑)

長編文学は 読むのにスタミナが要りますが、根気よく読み続ければ、

読み終える頃には 200ページ、300ページの現代小説は「余裕」になるので、

ぜひチャレンジを!

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フランス語版(ペーパー)

日本語版(ペーパー)

Une Sirène à Paris

著者 Mathias Malzieu

続いての小説は、「パリの人魚」という、

超絶ファンタジー!なタイトルが気になり(笑)、

たまには まるで あり得ない世界を楽しむのも良いかな、と思い購入。

2016年、パリが大洪水で大変なことになった 6月、たくさんの行方不明者が出た。

主人公のガスパールは、美しくも不思議な歌声に魅かれてセーヌ川のほとりへ近づくと、そこにいたのは なんと傷ついた人魚 ルラであった!

かなり消耗していたので、彼は その人魚を自宅に連れて行き、介抱することに。

すると、ルラから あることを聞かされる。

それは 彼女の歌声を聞いた人間は 漏れなく全員ルラに恋をしてしまい、恋をすると死んでしまうという とんでもない事実だった…

果たして ガスパールは恋に落ちてしまうのか? ガスパールとルラの結末は…?

著者は 書籍、レコード、映画など、様々な媒体で作品を生み出しており、

本書は 2020年に実写映画化されました。

現代文なので、非常に読みやすいですし、

映画化されただけあって、物語が頭の中で かなり鮮明に映像化されて 楽しく読むことが出来ました。

舞台が身近な「パリ」というのも また、想像の助けになっていると思います。

夏に訪問したパリ水族館が出てきたりもして、嬉しくなりました(^^)

度々出てくる滑稽なシーンや アクが強い隣人、飼い猫の仕草など、脳内に ありありと映し出され、「あぁ、こんな感じなんだろうなぁ…」と色々妄想していました(笑)

本を多く読む人は 比較的想像力が豊かだと思いますが、

同じ本でも かなり鮮烈に映像化できる本と、それほどでもないものと 2種類あると

個人的には思うのですが、こちらの作品は前者。

おそらく エンタメ的な要素が主で、概念とか思想を書いた抽象的な部分が少ないからなのでしょうが、「娯楽」として楽しむには ぴったり、フランス語 初心者にはとっつきやすい本だと思います。

かといって 「娯楽100%」ということでもなく、ちょっぴり切ない、でも希望を貰えるラストは、とても素敵でした。

ちなみに、映画の予告編を ちらっとチェックしたのですが、

私が監督だったら、ルラは もっと超絶美人で、人魚の鱗は もっとキラッキラの宝石のように演出する!と思いました(笑)

Code 612 Qui a tué le Petit Prince ?

著者 Michel Bussi

最後に紹介させていただくのは、

以前の読書感想文 第一弾でも紹介させていただいた、ミシェル・ビュッシの作品。

彼は ルーアン大学の教授で、以前に紹介した Nymphéas Noirs は数々の賞を受賞した傑作でもあります。

今回の作品は、タイトルからもお察しの通り、あのサンテクジュペリの名作「星の王子さま」の小説をベースにしたミステリー作品。

1944年7月31日 飛行機に乗ったサンテクジュペリは そのまま消息を絶ちます。

遺体は 今もなお見つからず。

星の王子さま でも 王子さまは蛇に噛まれて亡くなりますが、

「僕は 死んだように見えるけれど、そうではない」と本人が述べています。

サンテクジュペリの死と星の王子さま の死は、共通点が多い。

彼は 自分の考えを遺言として 「星の王子さま」の物語に託したのではないのか?

#サンテクジュペリを殺したのは、本当は誰なのか?

#星の王子 さまを殺したのは、本当は誰なのか?

この二つの謎を解き明かすために、飛行整備士のNeven と、探偵 見習いであり 星の王子さま の大ファンの Andie が

サンテクジュペリのように空を飛んで、

星の王子さま 愛好家の秘密クラブ Club 612 のメンバーに会い、調査をするという物語です。

作者も 星の王子さま の大ファンということから、

実際にサンテクジュペリのバイオグラフィー や 星の王子さまの草稿など、

細かいところまで参照し引用しているので(もちろんサンテクジュペリ財団の許可あり)、

星の王子さま やサンテクジュペリに関して、深いファン以外は知らないであろう秘話が盛りだくさん!

私は、「星の王子 さま」のイメージから

なんとなく サンテクジュペリに「クリーン」なイメージを持っていたのですが、

「え、全然やん!」みたいなエピソードがあったり、

でも やはり この作品を書いただけの人なんだなぁという繊細さも感じたりして(←小説家あるある?)、非常に興味深かった。

星の王子様ファンも、そうでない方も、作品を読んだことがない方も(←私!🤣) 、ぜひ一度手に取って読んで欲しい!と思えるほど面白かったです(^^)

ミステリーの内容としては、「メタファーが醍醐味」の 星の王子様を存分に活かしきったものとなっています。

Club 612 のメンバーによって事実の捉え方(誰が王子さま とサンテクジュペリを殺したのか)が まったく違い、話が二転、三転、五転、六転くらいして忙しいのですが、(人によっては 「で、結論は なんなんだい!」って思うかも笑)

それが面白いし、どれも メンバーにとっては それが真実で、もっともらしい考えに聞こえてきます。

どの考え方にも 得られることがあり、特に最後の章のメンバーが「真実」(この人物にとって)を語る場面に関しては、私が今 考えを巡らせ、答えを求めていたこと(答えなんてないものなのだけれど)、これから来るであろう未来の流れとマッチするような部分(今年は学びの分野で「引き寄せ」?が ぼちぼち起きている私…)だったので、雷に打たれたような衝撃でした。。

キリスト色があるとも言われている星の王子さま(本人は 信者ではなかったらしい)ですが、

本書では 「どの宗教・人種・年齢 の人にも響くもの、宗教からは離れた教理」とされていて、

個人的には 禅にも繋がる、というか、どちらかというと禅より?なもの、という感じも受けました。(こういう時に やはり 自分に流れる血を感じますね…)

この小説を書いた ミシェル・ビュッシは 非常に素晴らしい感覚の持ち主であることは もちろんですが、

改めて こういった様々な「考察」を引き出す原版を書いたサンテク・ジュペリは、

やはり「見えないもの」が見えていたのかなぁ。。

個人的な この本の感想を総括すると、

「星の王子様」の解釈の仕方は、深く読めば読むほど、読み手によって 様々な意味をなす(一般的な小説以上に)ということ。

人によって その人自身の人格や人生背景などが違うので、フォーカスする部分が異なり、解釈が様々になるのかなぁと、人は見たいものを見たいようにしか見ない、

逆に だからこそ見たい現実は自分でコントロール出来るのかな(現実逃避ではなく、深い意味合いで)、と思いました。

そして、私の この感想・捉え方も あくまで 「見たいもの」の一つなのだなあと。

ライトに書かれつつも、深いことが記されている、良書でした✨

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フランス語版(ペーパー)


今年も 改めて良書と出会えたことに感謝✨✨

「活字離れが多い」と よく言われている昨今ですが、

やはり、活字を追って想像して、時間をかけて理解をするというのは

個人的に大切なことだと思いますし、

(最近は映画ですら早送りをする新世代がいるということを知り、ドン引き…

タイムパフォーマンスも大事ですが😓)

なにより、そこで得たものは

より本人の「血」となり「肉」となり、「大切な物」になる気がします。

(まさに星の王子さまで出てくるトピックス)

まぁ、 とはいえ「読書」は 好き嫌いがあるので、

これも 楽しくフランス語を習得する一つのツールくらいの感覚で、

フランス語での読書を楽しんで欲しいと思っております✨

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投稿者: 青空

パリ在住。 パン職人が本業だが、マルチ・ポテンシャライトとして 現在 奔走中。 2015年に初のフランス1人旅をしてフランスの魅力に取りつかれ、2016年ワーキングホリデービザにて1年滞在。帰国後 再渡仏の為に奮闘、2018年10月に念願の労働ビザを取得しました。